損害賠償命令制度は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置 に関する法律(長いので、一般的に「犯罪被害者保護法」と言われたりします)24条1項 に規定されています。 刑事裁判においては、懲役〇年といった刑事的な責任については審理されますが、被害者 に対する慰謝料〇円といった民事的な責任については審理されません。 そのため、この制度が定められるまでは、もし被害に遭った方が犯人に対して金銭的な賠償 を求めたい場合には、刑事裁判とは別に民事裁判を提起する必要があり大きな負担を強いて しまっていました。 そのような中で被害者保護の機運が高まり、この制度を含めていくつかの被害者のための 法制度が設けられることになりました。この制度もその中の1つで、被害者の方が民事裁判 を新たに起こさなくとも、犯人に対して民事的な責任を追及できるようになりました。 この制度により刑事裁判の中でいずれの問題についても審理することができるので、被害 に遭われた方が新たに民事裁判を起こす時間的、経済的な負担を軽減できますし、刑事裁判 で有罪判決が下された後には直ちに審理が行われますので、速やかな被害回復を図ることが 期待できるようになりました。 ただ、全ての犯罪が対象になるわけではなく、下記のように損害賠償命令の対象となる 犯罪についても同じ法律に規定が設けられています(同法24条1項各号)。 1 殺人、傷害、強盗致死傷、危険運転致死傷などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪 2 不同意性交等、不同意わいせつなどの性犯罪 3 逮捕及び監禁の罪 4 略取、誘拐、人身売買の罪 5 2から4の犯罪行為を含む他の罪 6 1から5の未遂罪 対象になる犯罪は、同様に被害者保護を図ることを目的とする被害者参加制度対象事件と 基本的に共通しているものの、業務上過失致死傷罪や重過失致死傷罪、過失運転致死傷罪と いった過失犯については、過失相殺などの難しい判断を伴う争点が多いことから、この制度 の対象とはなっていません。 損害賠償命令制度が対象としている犯罪の被害に遭ってしまった方は、この制度を使って、 弁護士が力になることが出来るかもしれません。 より詳しい説明も可能ですので、1人で思い悩むだけではなく、ぜひ相談にお越しください。 宗像オフィス 弁護士 陣内 隆太