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「どこまできてる?日本の監視社会」~1/25九州アドボカシーセミナー開催のご報告

1月25日、NPO法人九州アドボカシーセンターの企画で、武藤赳明弁護士(日弁連・情報問題対策委員会副委員長、姪浜法律事務所)を講師にお招きし、「どこまできてる?日本の監視社会」というタイトルでお話を伺いました。

武藤弁護士はこれまで住基ネット訴訟やグーグルストリートビュー違憲訴訟において弁護団の中心としてプライバシー保護問題に取り組まれるとともに、日本弁護士連合会の委員の一員として継続的に監視カメラや顔認証システムの問題にも取り組まれ、ドイツなど諸外国へも調査に出向かれているなど、その分野の第一人者として新聞などのメディアの取材を受けられています。
まず、EUや諸外国では、プライバシー保護の問題として現在顔認証システムの限界が議論されているところ、日本ではようやくターゲティング広告が注目されるようになり、これからマイナンバーカードが推進されているような段階で、日本の問題意識や諸制度は諸外国よりもかなり遅れているという現状を紹介され、それは私たち市民がIT問題をよく理解していないことが原因と指摘されました。
情報流出という点に関しては、情報管理の不備で世界各地の監視カメラの映像がリアルタイムにインターネット上で閲覧できるようになってる外国のサイトをご紹介いただき(もちろん日本の監視カメラ映像も複数ありました)、適切な情報管理ができていないと情報が世界中に流出してしまう怖さを実感することができました。
そのような中、警察の捜査では顔認証システムが徐々に使用されるようになっていて、昨年10月東京の渋谷センター街で発生した軽トラック横転事件の被疑者特定には顔認証の手法が使われるなど、社会の監視化はすすんでいるとのことでした。
政府がすすめるマイナンバー制度についても、世界では、顔認証が主流になっているのに対して時代遅れで、無駄な事業ではないか、よく分からないまま進められているのではないかとも批判されていました。
最近政府が「プライバシー」や「個人情報」を盾に国民に重要な情報を公開しない姿勢については、民主主義国家はまずは情報の透明性を確保するのが原則であると言及されました。
EUではプライバシー保護に手厚く、原則として生体情報の収集、プロファイリング規制を禁止していることなどを紹介され、その根底には過去の国家的過ちに対する反省があり基本的人権を徹底的に擁護する立場がとられているとのことでした。

私自身もITに疎く、その仕組みが分からないままcookieやクラウドなどを使っていましたし、お話を伺う前は「監視社会」という言葉もピンときていませんでした。まさに武藤弁護士がおっしゃる「わからないから議論もできない」、思考停止状態に陥っていたことを反省しました。
武藤弁護士のお話を聞いて技術の発展とともに新たな監視化がすすんでいるということがよくわかり、民主主義国家を守るために情報流出、プライバシーの問題について学び、真剣に考え、便利さの反面社会全体としてどこまでが許容範囲で快適に過ごせるかを議論しないといけないとの思いを強くしました。

弁護士 小出真実(宗像オフィス)

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