本年、離婚後の父母双方に親権を認める「共同親権」導入を定めた改正民法が成立し(2026年5月24日までに施行されます)、現在離婚を検討中の父あるいは母からの施行後の共同親権についてのご相談を受けることも増えつつあります。そんな折、改正案の議論に実際に参加されていた原田弁護士の講演があることを知り、参加してきました。
共同親権について改正民法の条文の概要を整理しますと、
・協議離婚する場合には、その協議で共同親権か、単独親権か決める(改正民法819条1項)
・親権者を指定しないまま離婚をする場合、親権者を定めるよう家庭裁判所に調停または審判を申し立てる(同765条1項2号)
・裁判上の離婚の場合は、裁判所が共同親権か、単独親権かを定める(同819条2項)
・裁判所は、親権者の判断をするにあたり、「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない」(同819条7項)
ただし、下記の「いずれかに該当する場合」、その他「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」は、単独親権と定めなければならない(同項)
①父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
②父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、共同親権を行うことが困難であるとき
原田弁護士からは、共同親権が導入された背景としては、国連子どもの権利条約の基本理念(1989年)に、子自身に成長・発達する権利があり、父母による養育はこのような子どもの権利を保障するものであるとされ、欧米各国ではこの条約の批准を機に共同親権が導入されてきたこと、日本でも離婚後の面会交流の実施や親の権限の検討を経て導入に至ったことが説明されました。
他方で、諸外国では、親の権利と同時に子の養育のために義務を果たすこと、その権利が子の利益に反する時は権利が厳しく制限されていることや、協議離婚ではなく、そもそも親権を定めるには事前に支援機関による支援があったり、裁判上の手続きなど当事者以外の関与が制度上保障されている場合があるにもかかわらず、日本ではそのような議論が十分尽くされていないまま共同親権が導入されたことなど問題点もご指摘いただきました。
今回の講演に参加して、共同親権制度は導入されましたが、施行まで2年程あり、その議論状況も見ていく必要があることを改めて感じました。
また、改正民法の条文を見ても、裁判所が親権を判断する基準が抽象的であることから、施行後はもちろん、施行後を見据えて、今の段階から実際の事案ごとに事例の積み重ねが重要であると感じました。
弁護士 池永真由美(本部オフィス)