ここ10年近く身内の看護・介護を続けているため「どう看取るか」ばかり考えてきましたが、最近は自分が「どういう最期を迎えたいか」について考えることも多くなりました。
そんな私がよく開く本が2007年発行、倫理学研究者波多江伸子さん著『さようならを言うための時間』(木星舎)です。
さようならを言うための時間 | 木星舎ホームページ (mokuseisya.com)
北九州の渡橋俊則弁護士の、がん発覚から2006年7月に旅立たれるまでの1年ほどのお話なのですが、重い闘病記というより、渡橋弁護士が最期をホスピスで迎えると選択したことを尊重し支えるご両親や仕事仲間、ご友人たちのお話でもあります。
この本で描かれる渡橋弁護士の、他人を気遣いながらも好きなことをして過ごす姿のなんと魅力的なことか。決して無理せず、周りに集まって来られる同じように優しい方々に囲まれ、自分で選択し自分らしく最期までそこにいらっしゃいました。ボランティアとして支えた波多江さんの、どこまでも優しい文章は、死に向かうお話のはずなのに何故かどこかキラキラしていて不思議と優しい気持ちになります。
もちろん、渡橋弁護士が積極的治療を受けないという選択は、ご自身で調べ尽くし熟考を重ねた結果によるもので、他人が知り得ない苦悩もあったでしょうし簡単な決断でないことは理解しています。それでも読後に穏やかな気持ちになり、不謹慎ではありますが憧れさえ抱く最期の迎え方だと思います。
私にはもう一人、池永満弁護士というお手本もいます。池永弁護士がどう病気と向き合ったかも学んだつもりです。池永弁護士と渡橋弁護士は直方市出身、高校の先輩後輩というほかに共通項が思いつかなかったのですが「自分らしく」というところは同じだなと思います。今の私はこの二人をお手本に最期を迎えられたらと考えています。
私が法律事務所直方オフィスに勤務していた頃、この本の登場人物のお一人であるK弁護士と直方駅で偶然会いました。その日、渡橋弁護士のお父様とお酒を飲んだそうです。亡くなられて数年は経っている頃ですが、交流は続いているのだなと感動したことを覚えています。それもやはり渡橋弁護士のお人柄でしょうし、それを取り巻く素敵な方々が紡ぐ縁だろうと羨ましく思います。
理想の最期を迎えるためには、、当たり前のことですが、まずは何よりも今を大事に丁寧に生きる。暑い夏、お盆を前にそう思います。
宗像オフィス事務局S
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