新年、明けましておめでとうございます。
昨年12月、私もかかわっている福岡・住環境を守る会では恒例の「まちこわし大賞」と「まちの宝賞」を発表しました。「まちの宝賞」に選出されたのは福岡市内の「コミュニティ道路」です。聞き慣れない言葉ですが、道路に意図的に凸凹やクランクを設けて通行車両の速度を落とさせることで、自動車に主役を奪われてしまった道路空間を住民の生活空間へと取り戻すため1980年代から全国に広がったそうです。福岡市内にも荒戸、大橋、天神、西新、野間の5か所にコミュニティ道路が整備されています。
不勉強でこのようなコミュニティ道路を意識することなく生活してきましたが、福岡市内のとあるコミュニティ道路の直線化計画に触れる機会があり、その存在を知りました。その後、住民の方々の奮闘により、コミュニティ道路が整備された当時の住民や行政の願いが紐解かれ、直線化計画は白紙撤回されました。30数年前にたくさんの願いとともに私たちに託され、忘れ去られようとしていた「まちの宝」はこうして守られました。
いままさに忘れ去られようとしている宝が、もうひとつ。
「みなさんの中には、こんどの戰爭に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとう/\おかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。・・・いまやっと戰爭はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戰爭をして、日本の國はどんな利益があったでしょうか。何もありません。たゞ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。・・・こんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戰爭をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戰爭をするためのものは、いっさいもたないということです。・・・しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。」(文部省「あたらしい憲法のはなし」より)。
集団的自衛権行使を容認し、更には「防衛装備移転三原則」を閣議決定して武器輸出を原則解禁し、昨年11月には「平和貢献」を標榜して世界最大級の防衛装備品の見本市を開催。隣国にすらまともに歩み寄ろうとしない今のこの国の姿は、終戦直後を生きた方々の目にどう映るでしょうか。
二度の大戦を経験し、焦土と化したこの国で、もう二度と戦争を起こさないと誓い、世界に先駆けて自衛戦争をも放棄し、平和への願いを込めて託された日本国憲法は、私たちの宝です。この宝に込められたおおくの願いを紐解き、子や孫の世代に繋いでいかなければならない、新年を迎えるにあたり、その思いを強くしています。
本年が皆様にとって幸多き一年になりますことを心よりお祈りいたします。
2020年元旦 代表社員弁護士 池 永 修