医療機関における自分の治療の内容を知りたい時、原則として自分の診療録(カルテ)は開示を求めることができる、その際に理由は不要、ということを御存じでしょうか。根拠としては、個人情報保護法28条や「診療情報の提供等に関する指針」(厚生労働省)です。
介護施設の利用者も、自分の介護記録については同様です(同法)。
では、患者や介護施設の利用者が亡くなった後、その遺族は、診療録や介護記録の開示を求めることが出来るでしょうか。
前記「診療情報の提供等に関する指針」は、医療従事者等は、遺族に対して診療情報の提供をしなければならないと定めています。
また、同指針に従い、介護施設の利用者が亡くなった場合にも、遺族に対して、介護関係の記録の提供を行うものとする(医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス、平成29年4月14日、個人情報保護委員会厚生労働省)とされています。
近年では、医療機関や介護施設に申請すれば、任意に診療録や介護記録の開示を受けられることが多くなりました。
ただ、理由なく記録の開示を拒んだり、一部しか開示を受けられなかったなど、証拠保全の必要性が具体的に認められる場合には、裁判所に証拠保全を申し立てることも可能です。
「診療情報の提供等に関する指針」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15m.html
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
平成29年4月14日(令和5年3月一部改正)個人情報保護委員会厚生労働省
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/01_iryoukaigo_guidance5.pdf
弁護士 池永真由美(本部オフィス 福岡市東区)