今月10月2日、NPO法人九州アドボカシーセンター主催の講演会に参加しました。
「カルロスゴーンはなぜ逃げた!?どうなっている!?日本の刑事司法」
~国際水準からみる日本の『人質司法』~(講師:上田國廣法律事務所 上田國廣先生)
コロナ対策として、初の試みであるZOOMによるインターネット上での講演の生中継や、会場の座席の間隔を十分に空けるなど対策がとられていました。
講演の内容は、2018年の日産自動車前社長カルロス・ゴーン氏の逃亡事件を題材に、国際的な水準から日本の刑事司法のあり方について考えるというものでした。ゴーン事件そのものの当否ではなく、外国人であるゴーン氏が逮捕後に受けた扱いから日本の刑事司法がどう見えたのか、それを受けどうあるべきかを考えるという内容でした。
具体的にゴーン氏は逮捕後、このような扱いを受けたとのことです。
・一日8時間の取り調べを弁護士なしで受ける。
・小さな監房に勾留される(監房の外に出られるのは一日30分のみ)。
・入浴は週2回
・保釈後も家族(配偶者)に会えない等々。
さらに、日本の有罪率は99.4%であり、裁判がすべて終わるまでには10年はかかるという弁護士の見解を聞き絶望の後逃亡に至ったのではないか、というのがゴーン事件の経緯です。
憲法で適正な裁判を受ける権利が保障されているにもかかわらず、日本ではなぜこのような制度が長年改善されないのかというと様々な原因があるのですが、歴史的に捜査機関(国)側が制度の運用の面で強く、被疑者の権利を拡大する原則とその例外の逆転化が起き、制度の空洞化が起きているという事実があります。また、市民のあいだにも犯罪者に手厚くする必要はないという意識が少なからずあること、そもそもの関心の薄さから、改善が難航しているという現状があるとのことでした。
講演の最後に、このような現状での弁護士の役割についてお話がありました。
「弁護士は人権保障に大きな役割を果たすことが期待されていることから、憲法に規定された唯一の民間の職業である。個々の事件で被告の人権を守るため適正な手続きをとることに尽くすことが大切であり、現状でも犯行の態様やそこに至る経緯を十分に捜査することで役割をはたす事ができる。」
今回の講演を受け、私も法律事務所の職員として、より丁寧な対応を心がけるとともに、市民として刑事司法にもっと関心を持ち、今回のような講演に参加する機会があれば、積極的に参加し、意識を高めていきたいです。
本部オフィス(福岡市東区) 事務局I
~NPO法人九州アドボカシーセンターとは~
NPO法人九州アドボカシーセンターは、人権派弁護士を目指す学生を支援するため、法科大学院制度が導入された2004年に設立した特定非営利活動法人で、福岡県をはじめ、九州各県の法律事務所、弁護士有志からの協力と財政支援をうけて運営しています。詳しくは当法人HP内の「NPO法人九州アドボカシーセンターの活動」をご覧ください。