当法人の弁護士は、「きららの湯」をただでやるな!糸島市住民訴訟の弁護団の一員であったため、ここでそのご報告をさせて頂きます。
「きららの湯」をただでやるな!糸島市住民訴訟は、2017年5月24日に「きららの湯」の無償譲渡が無効であるとして提訴しました。その後、2021年4月28日に地裁判決、2022年4月18日に高裁判決が言い渡されました。結論はいずれも住民側の請求を認めませんでした。
裁判の結果は住民の声を汲んだものにはなりませんでしたが、住民置き去りの糸島市政に大きな釘を刺すことができました。6年近くに及ぶ活動の中では、健康増進事業を軽視した姿勢、政策の検証を回避しようとする態度が明らかとなり、今後原告の方々にとどまらず多くの糸島市民が糸島市政を厳しい目で見るきっかけになったと思います。また、控訴審では、入湯料の値上げが契約違反であったと判断されました。
私たち弁護団は、高裁判決を受けて、最高裁に上告及び上告受理申立をしました。
結果的にはこれらも却下及び上告不受理となりましたが、契約違反という高裁の判断が変わったわけではありません。
また、最高裁から上告受理申立を不受理とする決定が届く数日前、きららの湯を運営する日食システムが、きららの湯の営業停止を発表しました。2022年11月11日から現在に至るまで営業は再開されていません。
新聞記事によりますと、営業停止の理由は、新型コロナウィルスの感染拡大による利用者減及び燃油高騰にあるとされています。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大以前から利用者数は減少していました。糸島市は、高裁判決でも述べられていたように、2019年10月に、日食システムとの間における負担付贈与契約に違反してまで入湯料の100円値上げを認容しました。また、糸島市は同契約を潜脱するような形でのロッカー利用料10円の徴収を放置しました。それでも、営業停止に至ったとすれば、やはり民間移譲自体、特に移譲先の選定に問題があったのではないでしょうか。まさしく原告の方々の不安が的中してしまった形となりました。
2022年11月24日に糸島市と「きららの湯」の今後の行方を協議しましたが、糸島市担当者は「現在は日食システムを見守っている」という回答に終始しました。糸島市は、これまでの訴訟を教訓として市民に開かれた市政を行うことができるのかが問われていますが、未だその後どう対応しているのか聞こえてきません。
裁判での活動は一区切りとなりましたが、きららの湯という糸島市民の財産を守るための活動が必要であることには変わりないものと思います。また、糸島市に対しては、日食システムへの譲渡のときと同じ轍を踏まないことを望むばかりです。
朝倉オフィス 弁護士坂口裕亮